タイーホレポート 4



 風呂



 刑事 「よう寝れたか ? もう、なんぼなんでも切れとるやろ。」

 私 「寝れたよ。すんげーイビキの人おったけど気にならんかったし。そんなことどうでもええねん、それより風呂入らせくれや。家で風呂沸かしてるときにパクったやろ ?そやからもう四日も風呂に入ってへんねんぞ。」

 半ギレで文句を言う。

 刑事 「今日はどうやったかなぁ。まぁ、すぐ入れるて。」

 呑気なものである。

 留置場に入る時に、いの一番で係官に風呂の日を聞くと、二日後という返事。

 切れ目の苛立ちも手伝ってか、刑事と係官の前でキレた。

 私 「ええ加減にせぃよコラ ! ワシかって人間やど。このままくっさいままほっとくんかいな。どないかしたらんかいぃっ ! !」

 刑事 「わがまま言うたらあかんぞ。風呂の日は決まっとるんや。辛抱せい。」

 私 「ほんならあの時(逮捕時)、気ぃよう入れとってくれたらよかったんちゃうん。」

 誰にぶつけるでもなく不満をブチまける。

 まぁ、決まりを曲げて対応するのは難しいのは分かってはいたが。

 留置場内で

 係官 「水しか出えへんけど、それで良かったら風呂使うてええぞ。」

 この申し出に驚きながらも、喜んで使わせていただいた。(笑

 中々フレンドリーな係官である。

 感謝。

 その後房に入れられることになるのだが、私一人だけだった。

 一気に二人拘置所逝きになったという話。

 その日は取り調べは無く、その日は何もせずに寝て過ごした。



 検事拘留



 逮捕後48時間+24時間、つまり72時間以内に、起訴に足りる証拠もしくは見込みがあれば、検事は取調べ等のために引き続き10日間の拘留の手続きを取る。

 これが検事拘留である。

 検事の権限で、72時間+10日間に加えて、もう10日間拘留延長することができる。

 最初の13日間(72時間+10日間)で1クール、もう10日間足して23日間で2クールと言うが、48時間で出れない本格的な犯罪の場合、ほとんどが2クールの拘留となる。

 で、検事はその23日の間に警察からの捜査情報や証拠、調書を元に独自の調べをし、有罪に持ち込める様ならば裁判所に提訴 (起訴) するのである。

 逆を言えば、23日の間に確たる証拠が無く、有罪に持ち込めない見込みの場合は不起訴となる。

 まぁ、ほとんどの場合は無理クソに有罪にしちゃうんですけどね。(笑

 余罪等が露呈し再逮捕されると、検事が起訴するまでどんどん拘留延長をすることが出来、否認等で捜査や立件がスムーズにいかないと、起訴されるまで数ヶ月とか、半年とか取り調べされ、地獄を見る事となる。(笑

 しかも、起訴後も否認してたりすると、保釈可な事件でも保釈はほぼ認められない。




 次の日朝から検事拘留手続きのために裁判所へと連れて行かれた。

 待合室?は当然施錠され照明も薄暗く、呼び出し等も流れ作業で物を扱う様で、人間の尊厳や人権の配慮等の気配りが全く感じられなかった。

 犯罪者だけのための施設だから、当然といえばそうかも知れない。(笑

 ただ裁判官?と少し話すだけの形ばかりの手続きにほぼ一日かかった。(怒

 大した取調べも行われず拘留延長が認められるという事態に、矛盾を感じながらも権力の恐ろしさといい加減さを身をもって知る事となった。(笑



 結局その日も取調べは無く、留置場で過ごす。

 裁判所に行ってる間に、私の房に新入りさんが入ってきていた。

 年齢的に私より若く、取調べに対してのアドバイスとかしたりするうちに仲良くなり、すぐに打ち解けることができた。



 次の日、取調べが始まる。

 留置場内では一日一回の運動の時間に2本だけ喫煙が許されるだけだが、取調室で調書を作る時は喫煙は自由にできる。

 私 「なぁ、弁当(執行猶予)なんやから、捜査にも協力するからなんとか1クールにならん?」

 刑事 「あぁ、無理無理。こっちにも都合あるしな。諦めいよ。」

 私 「都合って、検事の都合ってことかいな。つまり、慣例やから変更できんっちゅーこっちゃな。」

 刑事 「まぁ、そういうこっちゃ。」

 私 「調べには全面的に協力するさかい、それなりに便宜図ってや。」

 刑事 「分かった。出来る事はしたるさかい。せやけど無茶言うなよ。」

 この約束が後になって効いてくる。

 私 「分かってるって。パクられんの初めてやけど、それなりにアンタらの事情は知ってるつもりやから。」

 刑事 「初めてにしては、お前妙にスレとるからのぅ。絵描く (事実とは違う供述) なよ。」

 こんな感じで、保釈までずっとフレンドリーで和んだ取調べだった。

 執行猶予判決狙いの私は逃亡する気などもないし、刑事もそれを知ってか取調べ中は手錠を外してもくれたし、そのまま席を立って私一人にすることもしばしばあった。

 つまり、スリッパ履きでではあるが、逃げようと思えばすぐに逃げれたのである。

 私の頭の中は、逮捕された以上、いかに早く保釈するかという考えしかありませんでした。



 今回はこのへんで。



 つづく♪

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